大学院入試 不 合格体験記 東京科学大学理学院数学系

はじめに

はじめまして。ルキといいます。

この記事は、東京科学大学(旧東京工業大学)大学院修士課程入学試験の 不 合格体験記です。

理学院数学系数学コースの、2025年4月入学を志願しました。

 

 


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自己紹介

私は2024年10月現在、東京科学大学理学院数学系学士課程4年に所属しています。研究室は幾何系です。

いわゆる内部生ですが、弊学の数学系は他の多くの系と違い、外部生と同じ試験に合格しなければ大学院へと進学することができません。

そうして、2025年度の入学試験を同期と共に受験し、見事に不合格を喰らいました。普通に筆記で落ちました。

今は、来年の院試を受験するつもりで準備をしています。直接話を聞きたい方は、Twitter(現X)にて@fire1073741824を検索してください。

 

この記事の読み方ガイド

この記事には、以下のことを書きます。長くなってしまったので、必要な部分のみ読むことを勧めます。

メインに想定する読者は、「科学大の数学系院試を控えた後輩、特に内部生」です。(もちろんそうでない方にもお読みいただけます。)

 

①科学大数学系院試情報

募集要項にも書いてある基本的なことから、自分の体験や同期の話から得られたことなど、知りうる情報をできる限り書きます。理由は、自分が情報へのアクセスの悪さにムカついたからです。具体的なイメージを持ちたい人や、データを求める人向け。

 

②私の院試対策体験

私の院試対策の経過を振り返ります。不合格だった私ですが、私がどれだけサボっていたのかというのも参考になるかと思います。逆に、これは効果を実感できた、ということも書きます。

ただし、自分が行ってきた詳しい勉強法は書きません。理由は二つあって、そもそも全然勉強していなかったため書けないからと、不合格者よりも合格者の勉強を参考にすべきだからです。

これについては、同期や諸先輩方の体験記が多く出回っているため、そちらを参考にしてください。

(僕の同期のRileyくんが、自身の体験記に、観測しうる全ての体験記を集めているので貼っておきます。ありがたいです。)

 

科学大数学系院試情報

まず、これから記すのはあくまで僕が体験した2025年度の入試についてであり、将来的に変化しうるという点には留意が必要です。

必ずご自身が受験する年の募集要項を確認してください。大抵のことは募集要項に記載されています。

 

出願

科学大院試は出願が6月上旬頃に始まります。出願情報はインターネットを通じて登録するのですが、出願書類は郵送する必要があります。

証明写真をデータで用意したり、成績証明書と卒業見込証明書を大学に取りに行ったりする必要があり(機械で印刷出来る)、早めに済ませておくことが大切です。自分はギリギリになり無駄に焦りました。

 

筆答試験

出願が終われば、いよいよ試験です。

試験は8月の中旬頃に行われます。筆答試験と口頭試問に分かれており、筆答試験がさらに午前、午後、英語に分けられます。

筆答試験の出来が悪いと、口頭試問に進むことが出来ません。2025年度では、8月16日に筆答試験があり、8月17日の夕方に口頭試問受験資格者発表がありました。(私はここで落ちています)晴れて資格を得られた受験者が、8月18日の口頭試問に挑みました。

 

筆答試験の時間割は以下でした。

午前 9:00~11:30 (150分)

午後 13:00~15:00 (120分)

英語 15:40~16:40 (60分)

持ち物として必要なものは、受験票、筆記用具、時計、辞書(後述)くらいでしょうか。絶妙に待ち時間があるので、お昼ご飯や勉強道具があると嬉しいかもしれません。(ご飯は生協でも買えます)

筆答試験の午前と午後については、過去の問題が公式サイトに公開されています。(解答は公開されていません)

東京工業大学大学院理工学研究科数学専攻大学院入学試験問題

また、問題と解答用紙の他に、B4サイズの白紙が2枚、計算用紙として配られました。安心。

 

筆答試験(午前)

午前の問題は大問が5つ出題され、全て必答問題です。例年、線形代数微分積分からそれぞれ2問、集合位相から1問が出題されています。弊学でいうとB2まで程度の知識で解けるようです。詳しくは過去問を参照してください。

 

筆答試験(午後)

午後の問題は大問が8つ出題され、好きな大問を2つ選んで解答する形式です。幾何系の問題は毎年多様体ホモロジーの2題があり、代数系、解析系からは大体3題ずつですが、分野が年によって異なるらしいです。弊学でいうとB3まで程度の知識で解けるようです。詳しくは過去問を参照してください。

 

筆答試験(英語)

英語の問題は大問が一つだけで、長文が出題されます。英語試験に合格することは口頭試問へ進むための必要条件であると明言されていますが、おそらく余程酷くない限り合格します。自己採点で和訳を除いて1問しか合っていなかった友人が合格しました。余程酷いというのは、白紙で出すとか、そんなやつです。

長文の題材は数学に関するものです。A4サイズ1ページとちょっと分くらいの長さで、設問は一段落分くらいの少し長めの和訳と、あとはアホみたいに簡単な数学の問題です。問題文も解答も日本語なので、英語長文の意味が取れればなにも困りません。

特徴的なのは、英和辞典を持ち込めることです。僕は前日に購入したジーニアスを持ち込みました。(生協になかったので、自由が丘まで行きました)先輩方の話によると「数学用語英和辞典」のようなものは使えないそうですが、隣で受験していた友人がバカデカい謎の辞書を何冊も持ち込み無事だったことから、割と何でもアリな気がします。

過去問は先輩方から入手可能ですが、正直必要ないレベルだと思います。

 

倍率・配点・ボーダーライン

定員は例年25人前後ですが、毎年多めに30人程度合格者が出ていました。受験者は例年6~70人程度なため、実質の倍率は2倍と少しです。

僕らの受けた年は受験番号が99まで発行され、試験会場には89人が集結し驚きましたが、最終的に39人と多めに合格者が出たため、結果的に倍率は2.28倍だったことになります。

 

さて、配点ですが、詳しくは公開されていないため、推察になります。先輩方の点数開示から、午前と午後が合わせて350点であることが分かっています。

私は、解くべき大問7つに、50点が均等に振られていると予想しています。1番わかりやすいですし、過去の点数開示の状況とも大きく矛盾しないと考えます。

 

ボーダーラインも公開されていないため、推察になります。が、おそらく、高校入試や共通テストのような高得点勝負ではないはずです。先輩方によれば、200点あれば筆記は通る、6割(210点)くらいの得点で上位だったことを仄めかされた、という話があったので、このあたりが余裕を持って合格出来るラインかなと思います。

ボーダーに目を向けると、自己採点で150点程度だった友人が無事合格しています。私の自己採点が115点なので、この辺り、100点台前半に口頭試問へ進むボーダーラインがある気がします。ただし、低い点で口頭試問へ進むと厳しい戦いを強いられそうです。年は違いますが、160点程度だった先輩が口頭試問で落とされたようなので、安心出来る点ではありません。

さらに、メタい話ですが、この記事を公開することで詳しい情報が広まった場合、ボーダーラインが上がる可能性があります。(そんな影響力はないと思うのですが)間に合うのであれば最低でも200点以上を取れるよう備えておくことが肝要です。

 

参考までに、私の2025年度の詳しい自己採点が以下です。開示が届いたら、また追記します。

午前

大問1 (1)〇(2)‪✕‬(3)〇 (30点)

大問2 (1)‪✕‬(2)‪✕‬ (0点)

大問3 (1)〇(2)〇(3)△(4)‪✕‬ (25点)

大問4 (1)△(2)‪✕‬(3)△ (5点)

大問5 (1)△(2)‪✕‬ (5点)

午後

大問5 (1)〇(2)〇(3)〇 (50点)

大問6 (1)‪✕‬(2)‪✕‬(3)‪✕‬(4)‪✕‬ (0点)

115点/350点

 

口頭試問

口頭試問前日の夕方頃、口頭試問受験資格者の受験番号がホームページで公開されます。口頭試問の順番に番号が並べられていますが、幾何系は例年番号順です。代数系は筆記の出来によって午前と午後に分かれるという噂があります。(この法則は崩れたという噂も聞きましたが、私はそうでもないのではと思っています)解析系は少なくて午後しか居なかったのでよく分かりません。

僕は口頭試問へ進めていないので、内容に関する情報をほとんど知りません。それについては、他の方の体験記を参考にしてください。筆記が良いとほとんど何も聞かれない、筆記の解き直しや関係ない数学の質問もされる、など、色々な噂がありますが、代数系、幾何系、解析系で形態が少し違うような気がします。同系統の先輩の体験記を探すと良いでしょう。

ちなみに、例年10人弱落とされています。2025年度は7人落ちましたが、上手く喋れなかったと辛そうにしていた同期はみんな受かりました。おそらく上手く喋れる人なんて居ないんだと思います。

 

 

私の院試対策体験

ここからは、私が筆答試験に向けて取り組んでいたことを書きます。私は落ちましたが、不合格者なりに、院試対策として有益だと思ったことを書いたつもりです。私がどれだけサボっていたかも、恥を忍んで書きました。適宜、参考にしたり、反面教師にしたりして役に立ててくれたら、報われます。

 

はじめにやったこと

院試対策を意識し始めて最初にやったことは、過去問を解いてみることでした。

これは、問題の形式を確認するとともに、自分の今の実力を正しく認識する目的がありましま。問題を解くために必要な知識や定石が備わっているのか確かめるために、まずは時間を計らずに、午前の問題のみを解いてみました。これは取り掛かりとしてはかなり効果的だったと思います。

これから院試対策を始めたいという人は、B2まで程度の内容を履修済みであれば、少なくとも午前の問題については挑戦する権利があるので、まずは過去問から好きな年を選んで解きましょう。ここ3,4年で難易度が上昇傾向にあるため、本番に近い難易度で試したい人は近年から、あまり自信が無いという人はもう少し前の年から選ぶと良いと思います。(古すぎると形式が違います。)

自分がB2以下だよという人は、まだ対策はいらないと思います。授業をしっかり受けて基礎を身につけましょう。

午前の問題は、50点×5問=250点と予想されます。解いたら自己採点をしてみましょう。院試対策という絶望がスタートします。

 

据えた目標点

院試情報でボーダーラインについて書きましたが、基本的には4割5分程度でスレスレで通る可能性があり、6割程度あれば余裕を持って口頭試問に進めると考えられます。午前と午後で同じ得点率を目指すとして、午前で必要な点数は110点、目標とすべき点数は150点程度と考えました。結論としては、私はこれに全く届かなかったので、今でも考えは変わりません。

 

初期

最初は、というべきか、最初から、というべきか、僕の午前の点数は2桁でした。まともに大問1つ解ききれることの方が少ない状態です。

同様の状態である後輩に告ぎます。この状態にある人は、その時点で落ちる可能性があります。なぜなら、危なげなく受かるような強い人は、これまで自分の勉強を積み上げていて、最初から150点~200点を取れる人たちだからです。(逆に、そのような人で院試に不安を感じている方は、もっと自分の力を信じてあげてください。)

油断せず、それなりの熱量で院試対策をするべきです。僕が落ちた最大の原因は、なんやかんや耐えるやろ、という謎の自信です。

とはいえ、僕も最初から余裕をかましていた訳ではなく、これはやべーなと思い、同期の立ち上げた院試対策会に頼ることになります。

 

午前対策(院試対策会)

例年、不安を感じた学生たちによって院試対策会が発足します。私の代ではB3の12月頃に話が上がり、Discord鯖なんかもできました。例年よりは少し早めだったみたいです。ここには多くの同期が集い、院試の過去問を材料に勉強していきました。

始めのうちは、午前の問題の対策をする会が開催されていました。ここでは、先程言及した強い人たちも、未知の院試という恐怖に怯え、院試対策会に参加していました。公開されている過去問には解答が無いのですが、強い人達が解答を作成し、それについてみんなで議論するという形で対策会が進行します。

この院試対策会ですが、前提として院試合格のために極めて効果の高い方法だと思います。合格者の体験記を読むと、院試対策会は非常に役に立つと書かれていますし、僕も院試対策会がなければ間違いなくもっと酷い結果になっていたと断言できます。内部生はこの意味で環境的に有利だとすら感じます。私が落ちたのは、単にその有利な環境を活かしきれなかったからです。

皆が院試対策会を利用して勉強し、メキメキと実力をつけている中、私はというと、なんとかなんじゃねという思い上がりを強めていくこととなります。原因は主に2つありました。

 

まず、院試対策会における私は、もちろん解けない問題がほとんどで、強い人の解答をみてほえーと思う程度の人間でした。ただし私の場合、この時点である程度、解答を読める程度の知識はあったために、このまま院試対策会に出ていれば点が上がっていく誤認します。今思えばこの時点で、私の不合格人生は始まっていたのでしょう。

数学というのは、そもそも前提となる定義などの知識事項だけでなく、定石やよく知られた手法など、その運用についても知識的な側面が大きい(出会ったことがあるか、それを覚えているかが大事)と感じます。「解答が読める」という状態は、あくまで前者が備わっているに過ぎません。「問題が解ける」ようになるために、私が蓄えるべきだったのは後者だったのだと思います。

それを身につける方法は、演習問題を沢山解くこと、あるいは、既にそれを備えている強い人に質問することだと思います。私は両方サボりました。院試対策会に真面目に出席していたことにかまけて、過去問以外の問題を解くなど一切していませんでした。強い人に質問することも、「あんま話したことないから」とか「初歩的なことを聞くのが恥ずかしいから」とか、とにかくよく分からない理由をつけて、あまりしませんでした。

 

さらにもう一つ、私にとっての誤算は、近年の難化傾向です。院試対策会終盤では、4年以上前の過去問が題材となっていましたが、古い問題は近年と比べて明確に難易度が低く、私の実力でも110点~140点程度取れることがありました。最低限110点を目指していた私は、この時点で「上手く行けば届くんじゃね?」と感じてしまい、最初の頃のような「何とかしなければやばい」という差し迫った危機感は、徐々に薄れていってしまいました。ヤバさを思い出せたのは、本番直前の3日間で直近3年分を解いた際、全く点が取れず撃沈した時です。何もかも遅すぎましたね。

 

結局、本番で午前が65点くらいという大事故を起こし、その傷を最後まで埋められず落ちているため、院試における大きな敗因の一つだったと思います。

 

ということで、午前対策について理想論を語るとすれば、近年の難易度で150点近く、昔の問題なら200点近くを安定して取れるよう準備しておくと安心です。点数が取れるようになってきたら、あとは時間を計って取り組んで、短い時間で答案を書けるようになったら完璧です。僕もこれから頑張ります。

 

午後対策(セミナー)

大々的な午前の院試対策会は、春休みに集まりづらくなったことを期に廃れ、B4からは各々で午後の対策を行っていく人が多かった印象です。午後の問題は専門によっても取り組む問題が違うので、分野ごとに少人数で展開している対策会がちらほらある程度でした。対策会の霧散に伴って、僕も午前の対策よりも午後の対策に力を入れたいと思うようになりました。それどころじゃなかったのにね。

 

午後の対策については、当初は順当に多様体ホモロジーを勉強しようと考えていました。そしてそれらがヤバかった時用のサブウェポンとして、比較的好きだった複素解析を解こうかなーとのんびり考えていました。

 

対策としては、指導教員の計らいもあり、セミナーを通じてホモロジーを練習していました。ある程度時間をかけてしっかり準備したことと、専門家である指導教員の助言があったことで、ホモロジーに関してはこの期間でかなり仕上がったと自負しています。最終的には過去問もほとんど解けるようになっていました。おそらく本番でもホモロジーでは間違えていないので、かなり効果があったと思っています。

 

一方の多様体ですが、実は幾何学第二の授業で100点を取っていたので、完全に油断していました。直前に復習すれば大丈夫やろと思っていたのですが、いざ過去問に取り組んでみるとまあ完答できない。ほぼ白紙の年もありました。当たり前ですが、早めに対策に取り組むことが何より肝要です。

さらにここで、私の院試対策を通じても最も愚かといえる選択をするのですが、何をトチ狂ったか、この時点でスッパリと多様体を諦めます。理由は、複素解析の過去問が想像以上に簡単だったからです。実は、複素解析はラスト数年で突然難化するのですが、私は演習用に最新年度を取っておいたので、気づきませんでした。

 

複素解析の問題は、複素解析第二までの知識、とりわけ留数定理周辺を抑えていればなんとなかる問題がほとんどで、少し演習すれば大体の過去問が戦えるようになりました。この時点で本番一か月前くらいですが、ホモロジー複素解析で合わせて6~70点程度は目指せそうだという目処が立ち、何とかなりそう感がムキムキと高まっていきます。その結果はそう、そんな状態で私が怠けないはずがありませんね。8月に入った超直前期とか、院試前とは思えないくらいダラダラ怠けて遊んでいましたね。

ヤバさに気づいたのは、やはり本番直前の3日間で直近3年分を解いた際、複素解析の点が全く取れず撃沈した時です。遅すぎましたね。

 

本番は午前で大事故にあった上で望んだので、両方ほぼ満点とらないとまずいくらいの気持ちでしたが、複素解析がやはり激ムズ。ホモロジーは比較的簡単だったらしく、調子よく解けたのですが、複素解析をほぼ白紙で提出します。どう考えても、もっと早めに多様体に取り組み、得意な幾何分野で2つ仕上げるべきでした。来年は殺してみせます。

 

ということで、午後対策については、自分が愚かすぎてあまり言えることがありません。とりあえず理想的には、早めに過去問を確認して敵を知ることと、安定して高得点が取れる単元を3つ以上保有しておくことだと思います。近年は特にですが、得意なはずの大問が地雷、ということが現実的な確率で起こると思います。2つしか持っていかないと、轢き殺された時に詰みます。

 

総まとめ

僕は筆答試験で落ち、口頭試問へは進めなかったので、行った対策は以上となります。

落ちた原因ですが、どう考えてもなんとか耐えると勘違いして、油断と怠慢に支配されたことです。あとがきに詳しく書きますが、僕はかなり運と才能だけで現在の立場を掴んでいるので、今回の試験も上振れてなんとかなると思っていました。甘ったれた人間でしたが、ここで挫折を味わえたのも、それはそれで良かったと思い込むことにします。

 

 

もし、ここまでお読み頂いた皆さんが、院試に対する具体的なイメージをつけ、院試対策に前向きになってくれているのであれば、この記事を書いた甲斐がありました。院試に対する考え方は色々あると思いますが、行きたいところに合格出来るのがやっぱり一番です。来年受ける方は一緒に、それ以降の方も、頑張っていきましょう。

そしてまだ院試への不安が拭いきれない皆さんは、あとがきを読んでください。何の役にも立ちませんが、私というしょーもない人間からのささやかなエールを残しておきます。それでは。

 

 

 

あとがき

可能な限り後輩へ向けて多くの有益な情報を残せればと、長々書いてきましたが、正直私は、これを読んでいる内部生は、事故がなければ合格すると思っています。

理由は大きく二つあって、一つはこの体験記に辿り着く程度には危機感を持って院試向き合っているからです。その危機感を最後まで忘れずに走り抜けてください。私の同期には、正直この人は危ないんじゃないかという人は複数名いましたが、彼らは合格を掴み取っていきました。私と大きく違った点は、彼らはそのことに自覚的で、高い危機感を持ち、努力し続け、戦い抜いたことでした。私からすると、全員が尊敬すべき優秀な人間です。

そして、おそらくあなたにもそれが出来る、というのがもう一つの理由です。あなたは確実に、私よりはるかに努力ができます。というのも、私くらい努力ができない人は、通常では弊学の学部入試には受からないからです。謙遜だと思いますか?実際には、半分は自慢です。

私はつい怠けてしまい、努力というものが極めて苦手です。ゲームでも、格ゲーやFPSのような、努力を要する部類はどちらかというと嫌いです。そして、その度合いはあなたより遥かに高い自信があります。なぜなら、私には才能があるからです。

入試でも検定でも資格試験でも何でもいいのですが、あなたはなにかに落ちたことはありますか?または、落ちないために、必死になって本気で努力した経験は?もしあるのであれば、それは必ず今のあなたの糧となっているため、自信を持ってください。

私は落ちませんでした。努力なんて生まれてからしたことがないのに、私は自分の持っていたセンス、感覚、才能だけに頼り、倍率10倍超えの中学受験も、有名大学を全て受けた私立大学受験も、本命の国公立大も、英検から運転免許に至るまで、全てから合格を貰ってきました。正直運が良かっただけだとも思うし、このままではいけないという思いはありました。が、努力しなくても合格してしまう成功体験がこれだけ積み重なれば、味をしめてしまうというものです。私は努力のやり方を知らないまま、なんとかなるだろうという謎の自信だけをひたすら強めていくことになりました。今回の私の不合格は、そんな人間にとうとうバチが当たったというだけの話なので、院試体験としてはかなり例外だと思います。

何が言いたいかというと、あなたは普通の人間なので、どこかで自分の才能を見限り、普通に努力をして弊学の学部入試を突破したはずです。周りには同じように努力できる人しか残っていないので、勘違いしているかもしれませんが、あなたは、努力のやり方を知っている人間です。油断しなければ院試には通ると思います。先述したように環境的にも有利だと思うので、使えるものを存分に使って、可能な限りの努力をもってして院試に臨んでください。きっと結果は応えてくれると思います。

 

 

これを読んだ方の少しでも多くが院試に無事合格することを祈って、本記事を締めくくりたいと思います。来年の「院試浪人体験記」でお会いしましょう。それでは。